美容鍼は痛い?美容鍼特有の「ひびき」とは?
2019.04.12

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肩こりや腰痛を和らげ、自律神経のバランスを整えてくれると期待される「美容鍼」。一度行ってみたいけど、鍼を使うため痛みを感じるのが心配という方もいるようです。ここでは美容鍼の痛みについて、また美容鍼特有の感覚である「ひびき」について、そのメカニズムも含めて解説します。
美容鍼とは?
鍼を使って治療するイメージはあっても、その鍼とは一体どんなものなのか、そもそも美容鍼自体がどのような治療法なのか、ご説明します。
施術について
鍼は東洋医学で行われる治療法の一つです。全身に存在するツボを鍼で刺激することにより、さまざまな不調の改善が期待できます。東洋医学において、ツボは体の臓器や組織とつながっていると考えられており、手で触ることのできない臓器や組織の不調に対して、ツボを介してアプローチするのです。
鍼の打ち方にもさまざまなパターンがあります。鍼をしてすぐ抜く方法もあれば、しばらく時間をおいてから抜く場合もあります。また、打った鍼に微弱な電流を流すこともあります。施術については鍼灸師が体の状態を確認し、その人にベストな方法を提案してくれます。
期待できる効果
鍼灸で改善が期待できる症状は非常に幅広く、WHO(世界保健機関)も臨床経験に基づいて効果が期待できるとしています。1979年に北京で「鍼灸に関するWHO地域間セミナー」で挙げられたその範囲は、呼吸器系疾患、胃腸障害、頭痛など49疾患に及びます。「WHOが認めた鍼の適応症」という表現がなされることがありますが、この時点でWHOは鍼の有効性の範囲を示すことを意図していなかったようですし、研究によって証明されたと述べたわけでもありませんでした。
ただ、近年WHOは鍼灸などの日本・中国の伝統医療を正式に認定しています。具体的にはWHOが定める「ICD(国際疾病分類)」に漢方や鍼灸などの医療が導入され、2019年に採択、2022年1月に発効しました。
また、NIH(アメリカ国立衛生研究所)による合意声明の中も鍼治療が手術後および化学療法による吐き気や嘔吐、つわり、手術後の歯痛に有効であるという明確な科学的根拠があるとしています。さらに、同機関は科学的根拠が十分ではないとしつつも、腰痛や頭痛、月経痛、喘息などにも鍼灸が有効である可能性があるとし、さらにこれに限定されるわけではないともしています。
臨床現場では鍼灸の持つ血行促進効果により、肩こりや腰痛、冷えといった体質の悩みの改善を期待して、動脈硬化症のような病気の治療の補完医療として実際の医療現場で鍼灸が取り入れられているケースもあります。
また、鍼灸によって体の免疫機能の向上も期待でき、風邪の予防やアレルギーの改善方法としても注目されています。ホルモンバランスを整えたい方、血流不足が原因となるひどい生理痛や不妊に悩まされている方にもおすすめです。
さらに自律神経の乱れを整える作用も期待でき、原因不明のイライラや不眠などの精神的な症状の緩和も可能とされています。自律神経の乱れによって引き起こされる症状は現代医療で完治させることが難しいため、病院で治らなかった方は鍼灸を選択肢のひとつとして検討できるかもしれません。
美容鍼って痛い?
さまざまな効果が期待できる美容鍼ですが、鍼を使用するために「痛い」というイメージがあることも事実。また、痛みの感じ方には個人差があり、実際施術してみないと分からない面もあります。ここでは、美容鍼を実際に経験した方々を対象に行なったアンケートから本当に「美容鍼が痛い」のか検証します。
「美容鍼は痛い」イメージがありますか?
HARICCHIは独自でアンケートを実施(2022年6月)し、美容鍼を受ける前と受けた後で「美容鍼の痛み」に対してイメージがどう変化したのか、お尋ねしました。
Q1:美容鍼を受けたことのある方へお伺いします。「美容鍼は痛い」というイメージがありましたか?
・はい:54.0%
・いいえ:31.0%
・どちらでもない:15.0%
(インターネットにて実施。HARICCHI独自アンケートによる。)
アンケート結果から、施術前に半数以上(54%)の方が「美容鍼は痛い」というイメージを何となく持っていたことがわかります。施術後、そのイメージがどのように変化したでしょうか?
Q2:「はい」と答え方にお尋ねします。施術して「美容鍼は痛い」というイメージは変わりましたか?
・はい:38.0%
・いいえ:27.0%
・どちらでもない:35.0%
施術後、「美容鍼はやはり痛かった」と感じた人は全体の27%でした。注目すべき点は、たしかに痛みを感じる人はいるものの、38%の人たちは「痛い」というイメージが変化し、払拭されたということです。
また「どちらでもない」と答えた方も35%おられ、「はい」と回答した方と合わせて全体の73%が「美容鍼は痛い」というイメージがあったものの、施術を受けた際には「痛い」という感覚がなかったことが伺えます。
美容鍼のイメージについて
HARICCHIが2022年4月に実施したアンケートでも美容鍼で施術を受ける前と後でイメージにどんな変化があったかお尋ねしました。いくつかご紹介します。
・「痛くない、即効性がある」
・「痛くなくて驚いた」
・「痛いと思ったが痛くなかった。案外手軽にでき、もっとハードルが高いと思っていたので驚きだった」
・「鍼をしたことがなかったので不安しかなかったが、全然痛くなかったし、リフトアップした気がして鍼ってこんなに効果があるんだ!と思いました」
・「受ける前→痛い。受けた後→全く痛くない」
施術前には「美容鍼は痛いのでは…」という不安を抱えていた方が、施術後にはそのイメージを大きく変化させたことが分かります。痛みを感じる人がまったくいなかった訳ではありませんが、上述したような期待できる効果を考えると、「痛いかもしれない」という漠然とした不安だけで美容鍼をあきらめてしまうのはもったいないでしょう。
美容鍼で感じる痛み
ここでは、美容鍼で感じる痛みについて具体的に説明します。そうすることで、過度に心配する必要がないことが分かるでしょう。
感じる痛みは2種類
鍼で感じる痛みは、大きく分けて2種類あります。ひとつめは、鍼が皮膚に入る瞬間の痛みです。チクっとした感覚ですが、この痛みは感じない人も多く、上述のアンケートが示す通りいつ鍼をされたか分からなかったという人もいます。鍼が皮膚に入るときの痛みについては、『美容鍼は本当に痛くない?美容鍼の効果や痛みを徹底解説!』に詳しく記載していますので、そちらも参考にしてください。
ふたつめは後述する鍼の刺激が身体に響くような、鍼特有の「ひびき」という感覚です。ひびきの感じ方には個人差が大きいようです。
痛みを感じることは少ない
鍼治療に使用される鍼にはいくつかの種類があります。国内で使われている代表的な鍼は「豪鍼(ごうしん)」で、ステンレス製のものが主流です。折れにくく、刺しやすい、また耐久性が高いにもかかわらず低コストなどの理由が挙げられます。
金・銀製の鍼は柔軟性があり、身体になじみやすいといわれていますが、コストがかかり、手入れが大変といったデメリットがあります。豪鍼を刺すといっても、その太さは約0.1mmで、毛髪(0.15㎜)よりも細く蚊の口先(0.08㎜)よりもわずかに太いだけですので、痛みはほとんどないといえます。
痛みに関して覚えておきたいのは、治療にあたる鍼灸師は資格を保有した専門家であり、痛みをできるだけ抑えた方法で鍼を打ってくれる、ということです。日本では多くの場合、「鍼管(しんかん)」と呼ばれる管に鍼を入れて、皮膚に当てながら鍼を打つ「管鍼法」が採用されています。この方法で施術を受ければ、皮膚が鍼を感じる痛みも最小限に抑えられます。
また美容鍼で使用される鍼には刺さない「ローラー鍼」やシールを貼るだけの「円皮鍼(でんぴしん)」もあります。症状などに合わせて、鍼は使い分けられます。豪鍼が不安という方はローラー鍼や円皮鍼の使用を鍼灸師に相談してみることもできるでしょう。
さらに鍼灸用の鍼は「針」のように先端が尖っているわけではありません。松葉型と呼ばれ、やや丸みを帯びた形状になっています。そのため、痛みは抑えられますし、血管や神経が傷つけられることもありません。
加えて、ほとんどの美容鍼では使い捨ての「ディスポーザブル鍼」を使っています。ディスポーザブル鍼を使用していない場合も、高圧蒸気滅菌などでウイルスや細菌を死滅させていますので衛生面も徹底しており、痛みだけでなく、感染面にも配慮しています。
美容鍼特有の感覚「ひびき」とは?
ここでは先にご紹介した美容鍼特有の感覚「ひびき」についてさらに詳しくご説明します。
「ひびき」とは?
鍼が筋肉に入る前に、ズーンと重く体に響いてくるような感覚を感じることがあります。これが鍼特有の感覚「ひびき」です。鍼に慣れている方や長い間症状に苦しんでいる人は、ひびきを気持ち良いと感じることが多いようですが、鍼にあまり慣れていない方や刺激が苦手な方の中には、痛いと感じたり、不快に感じたりすることもあるようです。
ひびきには「酸(さん)」「麻(ま)」「重(じゅう)」「脹(ちょう)」の4種類あるとされています。それぞれ「だるい」「しびれる」「重い」「腫れぼったい」という感覚を表します。鍼を打ったときに必ずこうした感覚があるわけではありませんし、それがなければ効果を期待できないというわけでもありません。
ひびきの表れ方を客観的、体系的に整理するのは困難といわれています。安徽中医学院の研究によると、4種類どころか、11種もの異なる性質の「ひびき」があり、おもに深部組織で感じるという特徴がありながらも、同じ性質の「ひびき」が色々な組織から得られると指摘しています。
つまり、特定の部位であってもそこに鍼を打てば誰にとっても必ず同じひびきが得られる訳ではないのです。専門家はひびきの感覚が多くの言葉で表現されるのは「刺激される組織の違いと刺激の与え方、強さ、さらに組織の感受性などに左右される」ためだとしています。
このひびきは鍼の打ち方によって強さを調整することが可能です。施術を受ける人の感じ方や症状に応じて、ひびきを強くすることはありますが、鍼が初めての方、ひびきが苦手な方に対しては配慮してくれるため、過度に心配する必要はありません。
「ひびき」のメカニズム
「ひびき」は専門的には「特気(とっき)」と呼ばれます。つまり、施術を受けた人が「気を得る」ということです。「気」は目には見えませんし、科学的にその存在が証明されているわけではありませんが、東洋医学では重要な概念です。
東洋医学では体のバランスを保つことを重視し、何らかの原因でそれが崩れることで体調を崩し、病気になるとします。人間の体内を流れるエネルギーである「気」、全身に栄養を運ぶ「血液」、消化や排泄をスムーズにし、臓器の働きとも関係する「水」の3つのバランスを維持するために、気を調整することが大切だと考えるのです。
「ひびき」は鍼を鍼を入れたときの体の反応だと考えると、太めの鍼を打つことで「ひびき」を大きくできますし、逆に入れる鍼が細ければ「ひびき」も減少することになります。
「ひびき」が体に与える影響
武庫川女子大学非常勤講師、中国遼寧中医大学客員教授の林暁萍氏によると、「ひびき」は脳内で鎮静作用を持つモルヒネを生み出す原動力とのことです。また脳の下垂体で作られるエンドルフィンも全身に作用し、精神を安定させるようです。
治療院の中にはあえてひびきを感じるような打ち方をするところもあります。しかし、ひびきを感じないからといってツボを刺激できていないというわけではありませんので、一概にひびきがある方が効果的だと言い切れるものではありません。ひびきの大小よりも、リラックスして施術を受けていただいた方がよいので、施術中の「ひびき」が不安な方は遠慮なく鍼灸師にご相談ください。
最後に
鍼灸で感じる痛みには、鍼が皮膚に入る瞬間の痛みと、鍼が筋肉に入る瞬間の「ひびき」の2種類があります。「ひびき」の感じ方には個人差があり、苦手な人もいれば、心地よいと感じる人もいます。
痛みには個人差がありますが、過度の不安を感じる必要はありません。「ひびき」が苦手という方は鍼灸師に相談してみることをおすすめします。きっと一人ひとりにあった施術をしてくれるはずです。
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